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2025年09月16日
2階建てや3階建ての注文住宅を計画する上で欠かせない階段計画。どのようなデザインにするのかだけでなく、実用性や安全性にも配慮した計画にすることが大切です。
今回のコラムでは階段の高さの基準や決め方、デザインアイデアについてご紹介します。是非最後までご覧ください。
CONTENTS
階段を考えるときに、まず知っておきたいのが「階段寸法」に関する専門用語です。
中でも「蹴上」「踏面」「踊り場」の3つは、快適で安全な階段づくりに欠かせないポイントです。
それぞれの意味と役割を整理すると、次のようになります。
用語 | 意味 | 役割・注意点 |
---|---|---|
蹴上 | 階段1段の高さ | 高すぎると上り下りがきつくなり、高齢者や子どもには負担が大きい。低すぎると段数が増えて階段スペースが長くなる。 |
踏面 | 階段の足を乗せる面 | 狭いと足が安定せず危険。広すぎると階段が場所をとり過ぎる。 |
踊り場 | 階段の途中で設置されている平坦で広めの面 | 上り下りの疲れを軽減し、安全性を高める役割。転落防止にも効果的。設計次第で採光や収納スペースの確保にも活用できる。 |
先ほどご紹介した、「蹴上」「踏面」「踊り場」には、建築基準法で最低限守らなければならない寸法が定められています。
これはあくまで 安全性を確保するための「最低基準」であり、実際に使いやすいかどうかはまた別問題です。
ここでは、建築基準法で定められている寸法と実際に使いやすいとされる寸法をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
用語 | 規定 | 実際に快適とされる寸法 | ポイント |
---|---|---|---|
蹴上 | 23㎝以下 | 約18cm前後 | 高すぎると上り下りがきつく、低すぎると段数が増える。 |
踏面 | 15㎝以上 | 20〜25cm程度 | 15cmだと足がはみ出すことがほとんど。日本人の平均足サイズ(23〜25cm)を考慮すると20cm以上あると安心。 |
踊り場 | 階段と踊り場の幅75㎝以上/高さ4m毎に設置 | 幅90cm以上あると余裕 | 休憩や転倒防止のために重要。ゆとりがあると安全性とデザイン性が高まる。 |
建築基準法は 「これ以下にすると危険」 という最低限の安全ラインです。
たとえば、
・「23cmの蹴上」=階段が急で高齢者や子どもには危険
・「15cmの踏面」=足が半分しか乗らず不安定
こうした例からもわかるように、快適で安心できる階段にするためには、実際の生活に合った寸法を検討することが大切です。
階段を設計する際、急な階段よりも緩やかな階段の方が安全で歩きやすいとされていますが、緩やかすぎると歩幅が合わなかったり、段数が増えてしまい、逆に疲れてしまうこともあります。
では、どのように階段の高さを決めるのが良いのでしょうか。実は階段の高さを決めるためのおすすめの計算方法があります。
この計算方法は、階段を上り下りする際に最も自然な歩幅とされており、負担の少ない階段を作るための目安となります。蹴上と踏面のバランスを考え、なるべく「=60㎝」に近づけることで、上り下りがしやすい階段になるでしょう。
■蹴上(高さ):18cm 踏面(奥行き):24cmの場合・・・「18×2+24=60」
→◎ 最も快適とされる組み合わせ
■蹴上(高さ):20cm 踏面(奥行き):20cmの場合・・・「20×2+20=60」
→〇 コンパクトな家向き
■蹴上(高さ):23cm 踏面(奥行き):15cmの場合・・・「23×2+15=61」
→△ 建築基準法には当てはまっているが、急で負担が大きい
階段の段差(蹴上)は、住む人の年齢や体力によって「ちょうどいい高さ」が変わります。
・小さなお子様がいる家庭
→段差が高いと一段一段が大きな負担になり、転倒の危険も。18cm前後の緩やかな階段がおすすめです。
・ 高齢の方がいる家庭
→膝や腰への負担を考えると、20cmを超えると辛く感じやすくなります。できるだけ低めに設定し、踏面も広めにとると安心です。
・若い世代やコンパクトな家
→スペースを優先したい場合は、蹴上を少し高めにして段数を減らすことも。ただし急になりすぎると毎日の昇降が大変になるので注意が必要です。
年齢を重ねると、体力や筋力の低下により、階段の上り下りが大きな負担になってきます。若いときは気にならなかった段差も、将来的には「少しの高さ」が大きな障害になることもあるので、老後を見据えた階段設計にすることが大切です。
階段設計時にできる工夫例
・段差(蹴上)をできるだけ低めに設定し、緩やかな階段にする
・踏面を広くとり、足をしっかり置ける安心感を確保する
・手すりを両側につけられるようにスペースを確保する
・将来的に「昇降機」等を設置できるように計画しておく
階段の設計では、実用性とデザイン性のどちらに重きを置くかを慎重に考えることが大切です。オープン階段や片持ち階段などのデザイン性を重視した階段は、視覚的な美しさを追求できますが、荷物を持ちながらの上り下りや、安全性の面で不便を感じるかもしれません。最適な階段を選ぶためには、家族のライフスタイルや将来の使い勝手を考慮し、バランスの取れた設計を心がけることが重要です。
〇階段の形状
オープン階段や片持ち階段は蹴込板(※1)がないため、デザイン性は高いですが、小さいお子様やペットがいる家庭では転落のリスクがあります。転落防止ネットを設置することも一つの対策ですが、デザイン重視の階段では景観が損なわれる可能性があるため、デザイン性と安全性のどちらを優先するかを予め考えることが重要です。
※1:階段の踏面と踏面の間の垂直な部分
◁左の事例:全館空調搭載の大人かっこいいダークトーンのお家
▷右の事例:落ち着き感のあるシンプルモダンな家
収納として活用する場合、1m前後の高さがあれば十分な収納スペースを確保することができます。扉やロールスクリーンをつけて目隠しするのも良いですね。収納の他にもヌックやカウンター、ペットスペースを計画するのもオススメです。ライフスタイルに合わせて、階段下スペースを有効活用しましょう。
◁左の事例:お家時間を楽しめる防音室のついた家
▷右の事例:落ちつきのある上質なガレージハウス
オープン階段や片持ち階段は注文住宅ならではの、デザイン性を重視した階段です。階段で光を遮断することがなく、風通しも良いため、より開放的な空間に仕上がります。
◁左の事例:キャットウォークとスキップフロアが繋がる住まい
▷右の事例:収納と回遊性にこだわった、無垢の優しいお家
ペンダントライトやフットライト、ブラケットライトなど照明だけでも豊富な選択肢があります。ただし、階段を上る際に照明が動線の妨げにならないよう、慎重に照明計画を立てることが重要です。さらに、照明のメンテナンスのしやすさも考慮しておくと良いでしょう。階段の雰囲気に調和する同じテイストの照明を選ぶことで、空間全体に統一感が生まれます。
下記を参考に階段の形状やデザインに合わせて、最適な照明を選びましょう。
【照明の種類と特徴】
・ダウンライト(天井埋め込み型)
→天井に埋め込むタイプの照明で空間がすっきりとした印象になります。階段の幅に沿って等間隔に配置すると安全性も高まります。
・ブラケットライト
→壁に取り付ける照明で、階段の段差をしっかり照らしてくれます。装飾性が高く、デザインのアクセントにもなります。
・フットライト
→段差や壁の低い位置に取り付け、足元を優しく照らす照明。夜間でも安心して移動できるでしょう。
・ペンダントライト
→吹き抜けやスケルトン階段と相性抜群な照明。デザイン性が高く、「魅せる階段」にぴったりです。
・間接照明
→踏み板の下や手すりに仕込むことにより、柔らかい光で安全性+雰囲気づくりを両立します。
◁左の事例:吹き抜けを取り入れた自然素材が美しい家
▷右の事例:全館空調搭載のアメリカンヴィンテージハウス
階段をリビングに配置する「リビングイン階段」は、家族が自然に顔を合わせる動線をつくれる人気の間取りです。
帰宅時や外出時に必ずリビングを通るため、声を掛け合いやすくなり、コミュニケーションが生まれやすいのが特徴です。
吹き抜けや大きな窓と組み合わせれば、明るく開放的なリビング空間を実現できます。ただし、冷暖房効率や音の伝わりやすさに配慮し、断熱ドアや間仕切りを取り入れる工夫が必要です。
今回のコラムでは、階段の高さの基準や決め方についてお話ししましたがいかがでしょうか。
デザイン性だけでなく、実用性や安全性も兼ね備えた階段計画をすることが必要です。
今回ご紹介した「蹴上×2+踏面=60cm」という計算方法を参考に、ご家族全員が快適に使用できる階段を計画しましょう。
HOLIDAYSは完全自由設計の間取りが強みです。おうちづくりのプロが、お客様のご希望に寄り添いながら、実用面や安全面など様々な角度からご提案いたします。おうちづくりをご検討中の方は、是非お近くのスタジオやモデルハウスにお越しください。
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